世界のミフネとメキシコ「価値ある男」
私は映画が好きで、昔から暇があると映画ばかり見ていたのですが、もっぱら洋画か韓国映画ばかりで、日本映画にはあまり興味を持てずにいました。ただ、黒澤明や小津安二郎といった日本のクラシック映画だけはいつも例外でした。
そんな昔の日本の映画といえば、三船敏郎。黒澤明のお気に入り俳優で、七人の侍、用心棒、羅生門など代表作は沢山。最近ふとSNSを開くと、スペイン語での記事にToshiro Mifuneという文字が出てきました。おや、と思って読んでみて知ったのですが、三船敏郎はメキシコの映画に出演したことがあったのだそうです。
その映画の名前は「Ánimas Trujano(アニマス・トルハノ)」。日本語タイトルは「価値ある男」です。
そんなメキシコ映画に起用された三船敏郎ですが、アジア人の役ではなく、オアハカの先住民族(しかも主人公)を演じているのです。頑張ってスペイン語のセリフを全て覚えた三船敏郎ですが、ネイティブによって吹き替えられたみたいです。
原題名であるアニマス・トルハノという貧しい農夫のお話。働き者の女房に子供の世話と畑を任せっきりで、自分は酒と博打の日々を送るアニマス。そんな彼が、人生の一発逆転を狙うという、いわゆる典型的な「怠け者ラティーノ」の性格を備えた主人公を三船敏郎が演じているそうです。
そんな役柄を日本人が演じるという、奇抜なアイデアを起用した映画ですが、映画公開から1年後に、外国語映画賞としてゴールデングローブ賞とオスカー賞にノミネートされました。
世界のミフネ、と言われた俳優ですが、まさかメキシコにもゆかりがあるのは驚きでした。
三船敏郎の日本帰国後の手紙には「メキシコの地でメキシコ人の皆さんに出会うことができ、とても嬉しく思います。私の母国日本と同様にメキシコを尊く、恋しく思います。」と書かれていたそうです。
更にファンになってしまいました。
キネマ旬報に過去掲載された三船敏郎のインタビューも興味深い内容ですので、是非ご一読ください。